第2回芭蕉の遺伝子石碑展 開催報告

会場 山寺芭蕉記念館 研究室2及び中庭
会期 平成21年7月10日(金)〜12日(日)

■ 石が引き出す詩歌の魅力
 昨年7月に開催された第1回展作品約200基の石碑は、その後山寺芭蕉記念館と風雅の国の二カ所に寄贈され、今も自由に見学することができます。一年ぶりに見るその姿は一年前と変化はなく、屋外に設置されているにも関わらず風化などという言葉とは無縁で、新品同様です。切磋琢磨する現代俳人歌人の姿の如くにも見えます。整然と並ぶ石碑は手入れの行き届いた庭園とマッチし清々しく、日々大切にしてくださっている関係者の皆様には感謝の言葉もありません。
 日本の神社には通常の神とは別に石が祀られていることが多く、また、外国でもイギリスのストーンヘンジやストーンサークルなど信仰の対象となっているものも多く存在します。意図的に壊さない限り大きな変化の起こらない石は永遠や不老不死の象徴であり、一般に数十年で一生を終える人間にとっては一種の憧れの対象ともいえます。石仏など信仰するための形に加工されていなくとも、石そのものに存在感があるわけです。
 石碑は、そんな“石”に詩歌を彫ったもの。素材としての石の魅力を知り、この先、石が過ごす数百年を考えると、本展の意義が違って感じられます。

■ 青空の下、畳の上、詩歌はどこでも鑑賞できる
 石碑205基の展示スペースは屋外と屋内の2カ所でしたが、それぞれにその特徴を活かし、詩歌の魅力を引き出すのに十分なものとなりました。
 白いテントで受付を済ませた来場者が目にするのは青い芝に映える石碑です。この屋外スペースでは、広々とした芝生の庭の遊歩道沿い左右に高さ30センチほどの細長い台を並べ、それぞれに石碑を数個ずつ展示しました。石碑の足下には白い化粧砂利を敷き詰め、高級感を演出しました。色とりどりに咲き誇る紫陽花、遠く山寺の五大堂を望む開放感の中で、石碑は一段と輝いて見えます。強風、雨、快晴と会期三日間を通じてめまぐるしく変化する空模様でしたが、どんな条件の中でも引き立つのが屋外展示です。
 また、屋内にも屋外とほぼ同サイズの展示台を設置し石碑を展示しました。屋内ならではの繊細な照明、掛け軸や生け花とのバランスの妙、畳に腰を下ろして心静かに鑑賞するやすらぎなど、石碑がより一層、芸術的、女性的に見えます。屋内とはいえ大きく開放感あるガラス窓があり、こちらからも山寺の五大堂を望むことができるなど、日本建築の中で観る石碑も新鮮に感じられました。


■ 美しい言葉で社会貢献を
 7月10日午後、山寺芭蕉記念館にて開幕式がとりおこなわれました。弊社スタッフによる力強い八丈太鼓演奏に始まったセレモニーは、来賓三名によるスピーチ、リボンカットと滞りなく進みましたが、地元テレビ局、新聞社にも取材していただき、現代詩歌の聖地としての魅力を各方面に伝えていただきました。スピーチ内容はそれぞれ、芭蕉、山寺、言葉などをテーマとしたものでしたが、その要約を紹介いたします。

●全国芭蕉句碑・塚・文学碑調査会 会長 弘中 孝様
 私はもともと土木を専門としておりまして、関門橋を造ることが夢だったのですが、なぜか50歳から文学に目覚め、『奥の細道』に出会って人生とは何か、人生とは旅だと知りました。今年で70歳ですが、今度は平家物語を一生懸命にやっております。
 日本全国を回って、奥の細道も三回巡りましたけれど、『石に刻まれた芭蕉』という本を出しました。芭蕉の句碑は全国にありますけれど、詳しいことはそれまで誰も知らなかったんです。この本には芭蕉の句碑3230基が載っていますが、その後も情報がどんどんと入ってきまして、その度に写真を撮りに行っております。
 芭蕉さんの句でいちばんいいのはやはり「閑かさや岩にしみ入る蝉の声」だと感じます。たまりません。山寺に来ると思いも深まります。『奥の細道』一万四千文字を全て覚えました。本当に素晴らしいものです。私、毎日朝二時に起きて夕方六時には寝るんです。陽が昇ったら起きて、沈んだら寝るということです。そんな風にして生活、人生を送っております。
 今日は朝のうちに展示してある205の石碑を全て観ましたけれど、いいですね。達筆ですね。石碑は、2〜300年は残ります。これだけのものが長い間残ると言うことは素晴らしいことだと思います。

●財団法人山形市文化振興事業団理事長 大場 登様
 本日は芭蕉さんの格好をされた方が二名いらっしゃいますが、本物の芭蕉さんも生きておられれば、このような姿だったのではないでしょうか。
 ご存知のとおり321年前の7月13日に芭蕉は山寺に来て、かの有名な句を詠んでおります。そして、鳴いていたセミはミンミンゼミなのかアブラゼミなのかという論争を斎藤茂吉さんが仕掛けるわけです。しかし、現在山寺で鳴いているのは「カナカナカナ」のヒグラシでございます。7月8日に「カナカナカナ」と鳴き始めました。このような中で第二回の石碑展は迎えることとなりました。
 昨日は雨がしとしとと降っていましたが、石碑を拝見してつくづく思ったことは、雨の中でも石碑はいい、むしろ、雨の中の方が石碑は映えるということです。また、作品内容の質の高さはもちろんのこと、一つ一つが達筆でして、短歌、俳句、川柳、それぞれの魅力がひきだされております。昨年展示された石碑は隣の風雅の国とこちらとに寄贈していただき、現在も展示されています。この一年、来る人、来る人、みなさんが印象深げに見ています。山寺の景観の中にしっかりと根を生やし、魅力が倍加したようです。山寺の宝物です。出品して下さった方々には大きな感謝とお祝い申し上げたいと思います。

●アートコミュニケーション 代表取締役社長 清水 雅
 今は亡きご家族への想いをつづった句や歌、日本の季節感の素晴らしさを再認識させてくれる作品、人生の尊さを教えてくれる作品などが石碑となって、この俳句の聖地とも言える山寺に残されることとなりました。
 みなさまは美しい日本語を巧みに操っていらっしゃいますが、現代では言葉がむしろ悪用される傾向にあり、特に振り込め詐欺やインターネット掲示板上での誹謗中傷など、他人を攻撃したり貶めたりすることに使われることが多いようです。インターネットも俳句や短歌の出典を調べたり歳時記の代わりに利用でき便利ですが、悪意を持って用いれば言葉の兵器と化してしまいます。言葉は正しい使い方をすれば100年後の100人の人々の心を動かし、幸せにしたり勇気づけたりできます。私どもも、美しい言葉、美しい日本語を後世に残してゆくために、こういった展覧会活動を通した社会貢献を続けております。政治は腐敗、経済は不況の中、昨年に続いてこれだけ多くの方々から作品をご提供いただき、さらに、石碑の収蔵、設置についてもスペースをご提供いただけたということを考えますと、まだまだ日本も大丈夫なのではないでしょうか。どうぞ今後とも可能な限りご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

■ 来場者の声

・新聞の記事を見て、普通にはない展覧会で面白そうだと思って来てみました。俳句や短歌の作品と書と石碑、この三つの素晴らしい融合に感動しました。

・いつもは何もない中庭に突然出現した石碑には、驚くと同時にワクワクさせられた。こんな展覧会は初めて!

・観光で来たら偶然この展覧会がやっていて、とてもラッキーでした。芭蕉の遺伝子を受け継ぐ皆さんの作品を、美しい山寺の自然と一緒に楽しめるなんてすごく贅沢だと思いました。

・私も俳句をやっていますが、自分の作品がこのような石碑になるなんて、出展された皆さんがうらやましいです。一つ一つの作品にそれぞれ個性があり、観ていて飽きなかったです。とても勉強になりました。

・図録があればもっといい。じっくり家でも石碑になっている作品を見たい。

・この石碑展は山形だけですか? 日本全国周ったら素敵なのではないでしょうか。私の住んでいる場所にも来て欲しい。

・石碑の展覧会というのは初めて聞いたが、とても美しく日本の文化を誇りに思えるような展覧会だった。俳句や短歌に対しての印象も変わった。自分もいつかこのような石碑を作りたい。

・俳句や短歌をこんな風に楽しめるとは知らなかった。石碑も一つ一つどれもが美しく素敵だった。出展されている作者の方々にも感謝を申し上げたい。

■最後に
 本展の成功を収めることができたのは、ひとえにご参加頂きました皆様方のお陰であることは申し上げるまでもございません。心より感謝申し上げます。今後とも皆様方のさらなるお力添えを賜りますようお願い致しますと共に、皆様のご発展を心よりお祈り申し上げます。

(芭蕉の遺伝子石碑展実行委員会)


MODEL : 服部玲央奈さん
プロフィールリンク UNION ENTERTAINMENT
photographs:taro