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■ 南米を圧倒的にリードする情熱の街ブエノスアイレス

 美しい歴史的建造物を改装したショッピングセンターのガレリアス・パシフィコは、歴史的にも政治的にも、また情報発信地としても重要なブエノスアイレスの中心、サン・ニコラス地区にあります。代々ピンク色に塗られてきた大統領府(カサ・ロサーダ)、7月9日大通りにそびえ立つオベリスコ、世界三大劇場のひとつコロン劇場などに取り囲まれ、まさに、文化都市ブエノスアイレスの象徴となっている施設です。一般にアルゼンチンでは12月から3月まで学校が休校となるので、朝から晩まで街に若者が溢れかえります。歩行者天国で有名なフロリダ通りは肩と肩が触れ合うほどの賑わいですが、暑い夏は涼をもとめる買い物客がショッピングモールに押し寄せ、施設内は買い物客や観光客でごったがえします。12月になれば、街にはクリスマスツリーやセールの看板が目につきます。南半球の12月は真夏となり、気温30度を超える暑い暑いクリスマスです。日本ではお正月が一番ですが、アルゼンチンはキリスト教を国教としているため、クリスマスが一年で最も大切な行事で、家族と一緒に過ごすことが優先されます。

■ 新しいスタイルで注目の的となった日本芸術祭

 本展は、両国修好110周年を記念した唯一最高のイベントであったため、前評判もよく、多くの芸術系雑誌、ウェブサイトなどで紹介されました。また、ガレリアス・パシフィコ内にあるボルヘス文化センターでの本展開催スペースは2000u、3フロアーにわたる大規模なもの。同センターで開催された海外アート展では最大級です。
 さて、ビアモンテ通りのメインエントランスから会場に入り、エスカレーターを登ると2階に受付がありますが、このスペースの壁面には、日本の書の大きな額作品が展示されました。大部分の来場者はここを通り抜けるため、記念撮影をする姿も頻繁に見かけられました。3階へ上ると、展示室は4つに分かれますが、その中の二室を書、一室を詩歌陶板、一室を絵画などの額作品の展示にそれぞれ使用しました。在アルゼンチン日本国大使館から日本のユネスコ世界遺産(清水寺、法隆寺など)や日本食(寿司、ざるそばなど)の立体模型が提供され、このイベントに華を添えました。また、会期2、3日目には東西学院による俳句講座、浪越流国際指圧学院講師による指圧講座、小津安二郎講座も開催されました。
 アルゼンチン人の作品は、俳句約40点、絵画約100点、彫刻約10点が3階スペースに展示されました。彫刻家のカルロス・レガソーニさんは廃材を使った蟻、馬、犬などのオブジェを出品、また、俳人でジャーナリストのフェルナンド・レグランさんは20人近い家族を引き連れて来場しました。

■ 拍手と歓声がこだまするオープニングセレモニー

 12月12日夜、アートコミュニケーション社スタッフによる和太鼓演奏でセレモニーはスタートしました。来賓3名によるスピーチ(要約掲載)の後に行われたリボンカットには在アルゼンチン日本国大使館・石田仁宏特命全権大使も加わり、両国友好の絆に会場が割れんばかりの拍手が湧き起こりました。同時に披露されたタンゴ演奏では、老舗の“カフェトルトーニ”でも活躍するファビオ&グラディスが華麗なステップで観衆を魅了しました。
 なお、会期中の来場者の中には、アミルカル・トロッサ様(タンゴ演奏者)、元プロサッカー選手フェルナンド・ダニエル・モネール様、在アルゼンチン・タイ王国大使、ブエノスアイレス市立外国語大学学長、在ブエノスアイレス・サンルイス州代表、南極砕氷船イリサール号艦長、らぷらた報知編集長、日本文化財団文化担当理事、日本画家トマス・ヤマダ様などがいらっしゃいました。また、マリアコダマ様(ボルヘス未亡人)、チリ外務省、パラグアイ観光省、アルゼンチン水素エネルギー協会会長、サンルイス日本語学校、サンタクルス州、トレレウ州、サルタ州、フフイ州、国立公園管理局などからはお祝いのメッセージをいただきました。

● スピーチ要約

ボルヘス文化センター館長ロジェル・ハロウア様
 当館がアルゼンチン日本芸術祭会場として選ばれ、アルゼンチンと日本の修好110周年を祝えることをたいへん嬉しく思います。アルゼンチンと日本の友好関係は多くの人々の地道な努力と新しい経済交流などを経て110周年を経て、今日、この華やかな芸術祭の開幕を迎えることができました。
 ボルヘス文化センターは文豪ホルヘ・ルイス・ボルヘスを記念した施設ですが、彼は日本を愛していました。もちろん奥様が日系の方であったことも理由の1つですが、彼自身が俳句を愛し、俳句を詠んでいました。
 アルゼンチンで日本食はたいへん人気があり、お寿司や天ぷらなど知らない人はいないと思います。アルゼンチンで日本食レストランに入るとアルゼンチン人が食べやすく親しみやすいスタイルにアレンジした日本食が出てくることもありますが、これも両国の友好の証と考えてください。
 本日はこの華やかなオープニングセレモニーを迎えることができ、本当に嬉しく思います。ありがとうございました。

ブエノスアイレス市文化省エミリオ・ラファエリ様
 ブエノスアイレスは多様な文化と人種の混ざった街であり、この街で開催されるこの展覧会はたいへん意義のあるものだと思います。また、アートコミュニケーション社がスペイン語圏では初めて、“南米のパリ”の異名を持つブエノスアイレスを日本芸術祭開催地として選んでくれたことに感謝します。この街で日本人、日本文化の役割はたいへん大きく、これも110年という長い年月の中で積み重ねられた努力の賜物と思います。
 この素晴らしい日本芸術祭との出会いをきっかけとして、ブエノスアイレス市は来年以降も毎年“ジャパンウィーク”、つまり日本文化紹介週間を設けたいと考えています。その内容は美術にとどまらず、音楽、文学、舞踊、建築、アニメなど多様なものとし、市内数カ所にある複数の市施設を利用した身近で広がりのあるものが理想的です。新しい友好の歴史を是非ともスタートさせたいと考えます。
 本日はアルゼンチン日本芸術祭2008の開幕、誠におめでとうございます。心より祝福申し上げます。

アートコミュニケーション代表取締役社長 清水 雅
 文学作品は、数ある芸術の中でも決して派手さや華やかさがありませんが、しかし、最も人の心に強い感銘や感動をもたらす文化です。このように文学作品を視覚的に見せる展覧会は世界的にもまだ珍しく、見せ方もこれから工夫や改良が必要です。皆様のご意見を元に改善して参りますので、スタッフまでお気軽に感想を伝えて頂ければ嬉しく思います。
 アルゼンチンは、芸術に対してどの国よりも先進的に取り組み、積極的に前衛性を取り入れる分子が活発であるにも関わらず、伝統を重視した「ゆるぎないアルゼンチンらしさ」が分母になっていると思います。その分母は色彩感覚であったり、音楽ではタンゴのエッセンスであったりします。伝統に対する敬意が守れていることが結果的に大きな魅力になっているのです。日本人も同様に、伝統的な、生まれながらに持つ感覚を大切にしています。季節の変化が激しい風土の特色があらゆる芸術作品に表れています。日本とアルゼンチンの両国は、どこか物哀しい哀愁を持った共通分母があるようです。それを「詩的叙情性」と捉えて、両国の絆を深めようというのが本展のグランドテーマです。本展を通して、参加者、鑑賞者が新たな発見や考え方、共感を見つけて頂くことを願います。
 本日、ご来場の皆様全員にお礼申し上げます。Muchas gracias.

■ 来場者の声から

◇フフイ州(アルゼンチン最北部)から来ました。今日の経験がきっかけになって、日本文化をもっと知りたい。

◇私は純粋に美術が好きです。アルゼンチンでは日本のものは珍しいので、楽しく鑑賞しました。

◇夏休みの旅行でチリから来ました。素晴らしい作品を見ることができて、幸先の良い旅のスタートになりました。作者がどんな人だろうと興味がわきました。会場そのものも素敵。

◇絵の色づかいがとても美しい。

◇立体的な額作品(平面工芸作品)は興味深かった。和紙、花など使った作品は、その繊細さに心を打たれた。

◇書は神秘的で宗教的な作品という印象を受けるが、実際には日本人は無宗教の人が多いと聞き不思議に思った。書の緊張感や静けさは理解しかねるが、羨ましくもある。

◇日本のポエムの陶板はなかなか自分の中に入ってこない。しかし、スペイン語に訳された内容を読み細部に目を通すと、挿絵も文字の線もとても心にしみわたる。

◇詩歌陶板のスペースは他分野とは異なった特殊な空間で、たいへん落ち着いた雰囲気だった。日本人の詩歌はそれぞれにテーマが違っても、とてもスケールが大きく悠々としたものを多く感じる。アルゼンチン人の俳句とは明らかに違うものだった。

■ 最後に

 本展の成功を収めることができたのは、ひとえにご参加頂きました日本人作家の皆様方のお陰であることは申し上げるまでもございません。心より感謝申し上げます。今後とも皆様方のさらなるお力添えを賜りますようお願い致しますと共に、皆様のご発展を心よりお祈り申し上げます。

(アルゼンチン日本芸術実行委員会)